大規模修繕と長期修繕計画ガイドライン

大規模修繕とはマンションの経年劣化や不具合などを補修・修繕する上で重要な工事となります。この大規模修繕には国土交通省による「長期修繕計画作成ガイドライン」や「建築基準法」にその実施時期等の目安が記載されています。そこで、大規模修繕の目安やポイントと実態がどうなっているのかについてお伝えしていきます。

大規模修繕のための長期修繕計画作成ガイドライン

大規模修繕については、国土交通省監修の「長期修繕計画標準様式・作成のガイドライン」というものがあります。このガイドラインによれば、大規模修繕の意義や重要性について次のように定義されています。

「マンションの経年に伴う劣化や不具合に対しては、大規模修繕等の計画修繕を適切に実施していくことが必要。また高経年マンションでは、質及び価値を長持ちさせていくために、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようマンションの性能をグレードアップし、住みよいマンションにしていくことが重要」

国土交通省の考え方に従えば、大規模修繕は「修繕」「改良」「改修」の3つの考え方から成り立っています。この場合、修繕とは劣化している箇所を元の状態に戻す工事になります。例えば、劣化した外壁タイルの補修やコーキングの打ち直しなどの補修や交換によって、建物の性能や美観を元の状態まで戻す作業になります。

また、改良についてはマンション各部をより高機能なものに交換したり、新たに設置してグレードアップを図る工事となります。階段の脇にスロープを設けてバリアフリー化したり、新たに宅配BOXを設置してマンションの使い心地や利便性を高める工事となります。

改修は修繕と改良を組合せ、より現在の居住水準などに見合ったマンションへとグレードアップさせるという意味があります。尚、ガイドラインでは大規模修繕のタイミングの目安を「12年前後」、全面改修については「24年前後」としています。

建築基準法による修繕について

大規模修繕については「建築基準法」という法律の中でも定められています。その定義については概ね国土交通省のガイドラインと同じですが、異なる点もありますのでご紹介していきましょう。

建築基準法では第2条の「第14号と第15号」で定義されており、それぞれ「大規模の修繕」と「大規模の模様替」に分けられています。大規模の修繕とは、「建築物の主要構造部の一種以上について行なう過半の修繕」をいい、大規模の模様替は「建築物の主要構造部の一種以上について行なう過半の模様替」としています。

この条文の前半にある「建築物の主要構造部」とは、建物の柱や壁、床、はり、屋根、階段などを意味しています。また、後半の「一種以上について行う過半の修繕」とは壁全体の半分以上について修繕するレベルの大規模修繕という意味になります。

「修繕」についての明確な定義は建築基準法にはありませんが、建築業界で一般的な「建築時の部材を使用して修繕前の状態に戻して価値を回復すること」であるとされています。「模様替」についての定義も同様にありませんが、建築業界の考え方に従えば、当初の材料や材質とは異なる部材を使用したり、異なる仕様にして物件の価値の低下を回避することであると考えられます。

大規模修繕の実態はどうなっているのか?

大規模修繕についてはご紹介した国土交通省のガイドラインに修繕の定義やポイント、修繕を実施すべき時期についての目安が示されています。しかしそのようなガイドラインの修繕時期や修繕工事の内容についてはあくまで目安にすぎず、実際の大規模修繕を必ずしもガイドライン通りに行なう必要はありません。

ガイドライン通りに定めた長期計画に合わせて「12年」「24年」「36年」のタイミングで大規模修繕を実施するマンションもありますが、実際にはマンションの劣化状況などに合わせて柔軟に対応した方が良い結果を生むことが多々あります。また、マンションの劣化や不具合に対する修繕工事内容もマンションの規模(世帯数)や築年数、構造などに応じて異なるため、ガイドラインで示されている修繕のポイントが実際には当てはまらないことも多いものです。

一般的には、大規模修繕は1回目より2回目、2回目よりも3回目のほうが工事費用は高額になってくる傾向があります。それは、対象箇所が増加したり、再度同じ箇所を修繕しなければならない事等が関連してくるためですが、修繕の実施にあたってはまずはマンションの経年劣化の状況や不具合の程度について正確に把握することが大切になってきます。

そして診断結果から優先順位を決めて修繕を行ない、逆にまだ継続使用が可能なものや劣化の程度が軽微な箇所については無理して修繕する必要性はありません。そうすれば、工事対象箇所の削減、あるいは工期の短縮につながる場合もあり、結果として余計なコストを負担せずに済むことにもなるでしょう。

また、不動産管理会社に大規模修繕の計画案などを委任する場合、より正確な診断につながり、結果的に割安になったというケースもあります。

まとめ

今回は国土交通省が定める「長期修繕計画作成ガイドライン」や「建築基準法」によって示される大規模修繕の定義、さらに個々の物件の状況に応じて異なる実際の修繕の目安や工事内容などについてお伝えしてきました。
ただし、あくまでもガイドラインは目安にすぎず、物件の診断によって正しく状況を見極め、物件毎に適切な修繕を実施していくことが重要です。

以上

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