どう違う?紛らわしい用語解説「原状回復」「現状回復」「原状復帰」

入居者と賃貸借契約を結ぶ際には、退去時の原状回復についての条件を記すことが一般的です。
この「原状回復」とは、どのようなことを指すのでしょうか。また、原状回復と似たものに「現状回復」や「原状復帰」という言葉もありますが、これら3つの言葉の意味とそれぞれの違いは何なのでしょうか。
本記事で詳しく解説していきます。

1.違いを解説~原状回復と現状回復

■原状回復とは
原状とは元々あった状態、初めの状態を示す言葉です。そのため、原状回復とは、元々の状態に戻すという意味になります。賃貸借物件の契約の際に用いられる言葉で、入居者は借りていた部屋に対して退去時には原状回復の義務を負うことが定められています。

原状回復とは、退去時と入居前の部屋の状況を確認し、入居中に汚してしまった箇所や傷つけてしまった場所などを修復し、入居前の状況に戻すことをいいます。ただし、賃貸借契約で定められた使用方法の範囲内で生活をしていても、どうしても壁紙や床などは経年劣化してしまうものですので、それらも含めて全てが入居者負担になるというわけではありません。入居者の負担で原状回復が必要となる範囲は、入居者の故意や過失などによって建物に損害を与えた場合やその箇所に限定され、通常の使用方法で生じた傷や汚れなどは本来その対象とはなりません。

■現状回復とは
一方で、現状回復とは現状を回復することです。現状とは現在の状態のことを指します。したがって、現状回復となると、現在の状態に回復するような意味合いになってしまい、賃貸借契約における言葉として正しいものとは考えにくくなります。
原状回復と表記すべきところを誤って現状回復としてしまうケースもあるようですが、正しくは原状回復と表記すべきであるといえます。

2.違いを解説~原状回復と原状復帰
原状復帰とは、原状、つまりは元の状態に復帰させるということで、原状回復と同じ意味合いの言葉です。原状回復は、賃貸借契約書や法律でも使われる言葉であり、一般的に知られている用語です。一方、原状復帰とは、建設業界や建設業に携わる人の中で使われることの多い言葉です。

原状回復が元の状態に戻すことを指すのに対し、原状復帰は、元の状態に戻すための「行為そのもの」を指すことが一般的です。たとえば、入居者が退去した後に、部屋の原状回復をするために原状復帰の工事を行なうといったような用い方をします。

個人が住居として入居する際には、それほど大きな原状復帰の工事を行なうことはあまりありませんが、大規模な原状復帰の工事が発生するケースとしては、「オフィス」や「店舗」として契約・使用していた契約者が退去する場合があげられます。入居者が設置していたデスクやカウンター、テーブル、増設したドアや仕切りあるいはスロープの設置等があった場合、これらの解体や撤去を行ないますので、住居として使用されていた場合とは大きく異なる工事が発生するためです。
場合によっては壁紙や床の張り替え、塗装、室内のクリーニング、電気や水回り設備の修繕まで行ない、入居する前の状態に戻します。
この解体から内装、クリーニング、修繕までの一連の工事を原状復帰工事といいます。

3.賃貸物件の原状回復とは
■原状回復をめぐるトラブル
賃貸借契約においては、原状回復費用をめぐるトラブルが発生しているのも事実です。賃貸借契約書には退去時における入居者の原状回復義務についての記載がなされますが、どこまでを原状回復の範囲とするかの解釈の違いによって引き起こされるトラブルがほとんどです。
壁に穴が開いている、床に大きなへこみができている、煙草のヤニで壁紙や天井が汚れてしまっているなど、部屋の損傷や汚れがひどい場合には大規模な原状回復工事が必要となり、工事費用も高額になります。そのため、大規模な修繕が必要になるほど、工事費用が高額になるほど入居者の工事費用負担割合をめぐるトラブルが発生することが多くなっています。

■原状回復の範囲
通常の使用方法で生活を送る中、自然と劣化していくものに関しては、経年劣化と判断されています。たとえば、壁紙や床の日焼けによる色褪せ、家具や家電を設置したときに生じる床のへこみ、画びょうを指したことによる小さな穴などが該当します。これらは経年劣化や通常消耗と考えられ、入居者に原状回復費用の負担を求めるものではありません。

しかし、物をぶつけたり落としたりしたことで床やドアなどに生じたへこみやキズ、煙草のヤニによって汚れや臭いが付着した壁紙、部屋や水回りの掃除を怠ったために室内や浴室に発生したカビなど、入居者の過失によって生じた損傷や汚れについては、入居者に原状回復の義務が求められることになります。

4.まとめ
原状回復、現状回復、原状復帰と紛らわしい3つの言葉について、それぞれの意味や内容をご紹介しました。

賃貸借契約においては、部屋の状態を元々あった状態に戻すという意味において原状回復が用いられ、原状復帰は建設関連の用語として用いられることの多い言葉です。
賃貸物件では、退去時の原状回復費用の負担割合についてトラブルが起きることもありますので、契約を結ぶ際には、原状回復の範囲等についても事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
以上

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