マンションの大規模修繕費用はどのような場合に減価償却になるのか

マンションの大規模修繕工事を行なう際に、その工事費用を減価償却する場合と一括で支出に計上する場合があります。どのようなケースで、大規模修繕工事にかかる費用を減価償却することになるのでしょうか。

この疑問を解決するために必要となる資本的支出や修繕費の概要とその見極め方についてご紹介します。

1.資本的支出と修繕費
■資本的支出とは
資本的支出とは、マンションなどの固定資産の使用可能な期間を延長、もしくはその価値を高めるために行なった修理や改良に支出した金額のことを指します。
資本的支出は有形固定資産の取得原価に算入され、資産として取り扱うことになります。そのため、基本的支出は税法上、一度に全額を経費計上するのではなく、建物の耐用年数に応じて減価償却をしなければなりません。

現在のものよりも耐水性を高めた耐用年数の長い塗料を外壁に塗装する場合は、これによって建物の耐用年数を延長させることができるため、資本的支出に該当します。また、耐震性を高めるために耐震補強工事を行なった場合も、建物の耐用年数を延ばし、資産としての価値も高めることとなるため、資本的支出となります。

■修繕費とは
修繕費とは、通常の維持管理や傷んだ部分、壊れた部分を元々の状態に戻すことを目的とした工事に支出した金額を指します。また、費用が少額な工事や短い周期で修繕が必要となるような工事も、修繕費として取り扱います。

修繕費は、期間費用としてその工事を行った年に一括で経費に計上することができます。
建物を維持するために行なった外壁塗装などは、建物の資産的価値を高めるわけではないため、修繕費として扱うことができます。また、自然災害などで壊れてしまった箇所の補修、外壁にひびが入ってしまった場合の補修なども、原状回復工事に該当し、修繕費としての取り扱いになります。

2.どのような場合に減価償却となるのか?
■マンションの価値を高める工事か維持するための工事か
大規模修繕工事の費用が資本的支出と修繕費のどちらに該当するのかを判断するポイントは、建物の性能や価値を以前より高めるものになるのか、元々の状態に戻すためのものなのかという点にあります。
以前よりもマンションの価値を高め、その性能をグレードアップさせるための工事であれば、資本的支出に該当し、減価償却の対象となります。しかし、資本的支出となるのか修繕費となるのかの基準はあいまいなものも多いのが現状です。判断が難しい場合もありますが、あくまでも税務法上の基準に則って考える必要があります。

■資本的支出と修繕費の見極め方
1件あたりの修理や改良にかかる支出額が20万円未満、もしくは3年に一度の周期で修理や改良が必要となるものは、修繕費に該当します。

原状回復なのか性能を高める工事なのか判断がつかない場合は、1件あたりの修理にかかる支出額が60万円未満、もしくは1件あたりの修理のために必要とした金額が、修理等の対象となった固定資産の前期末における取得価額の10%以下である場合は、修繕費としての取り扱いになります。これにも該当しない場合は、修理にかかった費用の30%、またはその固定資産の前期末取得価額の10%のいずれか少ない額を修繕費とし、残りを資本的支出として扱うようになります。

また、青色申告をしている場合は、1件30万円未満の設備を購入・設置した場合でも少額減価償却資産という制度を利用すると、年間300万円までは大規模修繕を行った年に一括して経費に計上することができ、大きな節税効果が期待できます。

3.大規模修繕と耐用年数  
■修繕費に該当する大規模修繕の場合
大規模修繕の目的がマンションの性能を高めるものではなく、建物としての性能を維持するための原状回復工事に該当する場合、マンションの使用可能期間が延長されるものではありません。したがって、修繕費に該当する大規模修繕の場合は、マンションの耐用年数に変更はありません。

■資本的支出に該当する大規模修繕の場合
屋上の防水性能を高めたり、外壁に耐水性を高めた塗料を使用したりとマンションの性能をグレードアップさせ、資産価値を高める大規模修繕工事の場合は、資本的支出に該当します。資本的支出に該当する場合は、原則として資本的支出を行った有形固定資産と同じ種類かつ同じ耐用年数の新たな資産を取得したものと捉えられます。

たとえば、不動産取得から20年目に耐用年数が47年のRC造のマンションに、500万円の資本的支出による大規模修繕を行った場合は、500万円を47年かけて減価償却をすることとなり、1年あたりの償却額は10万6千円程度となります。

4.まとめ
マンションの大規模修繕費用が減価償却の対象となるケースは、その修繕工事が資本的支出に該当する工事であったときです。マンションのもつ性能や資産的価値を高めるために行なう工事にかかる費用は資本的支出に該当し、マンションの耐用年数に合わせて減価償却をしていくこととなります。
その際、マンションを取得してから経過した年数や築年数に関わらず、RC造であれば47年、SRC造であれば34年の耐用年数に応じた減価償却となるので注意が必要です。
以上

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