マンションの大規模修繕/資金計画のポイント

マンションの大規模修繕には高額な費用がかかります。そのため、分譲マンションでは住民が修繕費用を毎月、積み立てています。
しかし、賃貸マンションの場合は、修繕費用はすべてオーナーの負担となるため、より慎重な資金計画が必要となります。

そこで今回は、必要な工事内容を精査し、無駄なコストを抑え、予算範囲内で修繕工事を成功させるために必要な大規模修繕工事の資金計画のポイントについてご紹介します。

1.修繕計画と金額の妥当性
■修繕計画の作成と見積もり
大規模修繕工事にどのくらいの費用が必要となるのかは、修繕工事の内容や範囲が具体的に示されないとわかりません。そのため、大規模修繕工事の前に、マンション管理会社、コンサルタント会社などに相談し修繕計画の立案を依頼しましょう。

修繕計画では、工事を開始する時期、工事に要する期間、工事の範囲と内容、必要な材料とその数量や単価、工事に用いる工法などの計画が示されます。そこから、より具体的に作成された設計図や工事の仕様書などをもとに、工事の概算費用が出されます。

■概算費用の検討
修繕計画が提出され、大規模修繕工事の概算費用の金額が示されたら、その金額が工事内容に対して適正なものであるのかを判断しなければなりません。また、概算費用の金額については必ずしも事前に確定されるものではなく、実際に工事が始まってからの工数の追加や内容の変更等があった場合、金額も変動するケースもあります。

概算費用の段階で想定している予算を超える金額であった場合には、工事範囲と内容・工法を再検討するなど、計画の見直しを適切に判断していくことが求められます。

設計資料等の作成
概算費用が固まれば、次のステップとして工事予算書を作成します。工事予算書は各工事項目を細分化した明細書の形式でそれぞれの数量・金額がより具体的になります。また、工事に使用される材料のグレード、性能、工法などが明記された特記仕様書、工事範囲を分かりやすくするために作成される施工範囲図なども作成されます。

これらの設計図書を使って各施工業者から見積を取ることによって、同じ工事内容・数量で金額を比較できるので、工事金額の透明性が確保できます。

ただし、この方法によらない見積の取得方法もあり、それぞれのメリット・デメリットを検討したうえで最適な修繕計画立案を目指しましょう。

2.修繕計画での注意ポイント
■予算には予備費を用意しておくこと
修繕工事が開始されると、足場等が設置され、より詳細な調査が行なわれますが、計画数量に対して実数との増減が生じる可能性があります。そうなると、計画よりも補修箇所が増えたり、工期が延びたりといったことが発生し、当初の工事金額よりも費用がかかってしまうケースがあります。そのため、修繕計画で提出された概算費用に合わせたギリギリの予算計画を立てると、後から追加分の支払いに応じられなくなってしまう可能性があります。
そうなってしまわないように、工事金額が増額する場合に備えて予算にはあらかじめ予備費を準備しておきましょう。

3.資金不足時の対応
■金融機関からの借り入れ
修繕費用が想定よりも高くなって支払いが難しくなってしまった場合には、金融機関から借り入れを行なうことも選択肢の一つです。毎月の家賃収入からその一部を返済に充てることもできますが、次回の修繕費用についても積み立てをしておかなくてはなりませんので、急な資金不足となってしまった場合にはどのように資金を確保するかは大きな課題となります。

■工事内容や修繕範囲の見直し
もう一度、工事の方法や修繕範囲を見直して、大規模修繕工事の計画を修正することも1つの手段です。今やらなくても問題のない箇所があれば修繕を取りやめたり、グレードを下げても基本的な機能に支障が出ない場合は建材のグレードを見直す、あるいは予算を抑えられる別な工法があればその工法を採用するなどして、想定した予算内でできる修繕工事のみに変更することも可能です。とはいえ、やらなければならない工事まで予算優先で削ってしまっては、後々に悪影響が出る可能性もありますので、内容や範囲の見直しについては慎重な判断が求められます。

■修繕工事の延期
資金がどうしても不足する場合には、修繕工事自体を延期し、延長期間に修繕費用を蓄える方法もあります。とはいえ、いつまでも修繕を先延ばししているわけにはいきません。
大規模修繕工事を実施する時期の目標を定め、それに向けての資金計画を立てるなどして、期間内に必ず資金を準備できるようにしましょう。

4.まとめ
大規模修繕工事には、多額の費用が必要となります。万が一、修繕を行なう資金が不足する場合には、分譲マンションであれば修繕費用を区分所有者で分担することができますが、賃貸マンションの場合は修繕費用の全額をオーナーが負担しなければなりません。

資金不足を補うための対策としては、金融機関からの借り入れ、修繕範囲や工法の見直し、修繕工事の延期などの方法が考えられます。いずれの場合であっても、無駄な費用をかけることなく適切な方法で必要な箇所を修繕できるよう、工事の範囲や工法など、修繕計画が適切なものであるか、修繕費用が妥当なものであるかどうかをしっかりと見極めることが大切です。
そのため、場当たり的な対応にならないよう中~長期的な視野にたち、計画的に実施していく事がとても大事になります。

以上

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