不動産テックについて(スマートロック編)

1.躍進するIoT
 
昨今、「IoT」という言葉をよく耳にするようになりました。IoTはInternet of Thingsの略で、直訳すると「モノのインターネット」、つまりモノがインターネット経由で通信することを意味します。
IoTという言葉ができる以前、インターネットはあくまでもコンピュータ同士を接続するためのものであり、主にパソコンやサーバー等のIT関連機器が接続されていました。しかし現在ではスマートフォンやタブレット端末はもちろん、テレビやデジタルカメラ、または話題のスマートスピーカー等のデジタル情報家電をインターネットに接続する流れが加速しており、不動産テックの中でも注目される分野です。
今回はその中でも生活に浸透しつつある、スマートロックについてご紹介します。

2.スマートロックとは
 
スマートロックとは「通信・認証機能をもち、外部からITによって制御できる鍵」のことをいいます。通信の方法や制御の仕方も複数のパターンがありますが、いずれも物理的な鍵ではなく、情報によってコントロールする製品を指します。
国内では2015年頃からスマートロックの一般発売が開始され、スマートフォン等を通じて鍵をシェアできる事などが大きなインパクトを与えました。スマートロック製品はその後も増え続けており、カギの開け方(解錠方法または認証方式)や費用、取り付け方法も様々なタイプが出てきています。

3.スマートロックの設置
 
スマートロックが少しずつ市場に浸透しつつある理由の一つに、設置が容易である点が挙げられます。一見すると大掛かりな工事が必要なように感じられますが、実は後付け型のスマートロックでは、既存の扉にワンタッチで設置するだけでその日から利用開始可能になるものもあります。既存の扉への取り付け方法としては両面テープや磁石等で可能な製品もあり、それらのタイプは取り外し方法もシンプルなので移設も簡単に行なえます。逆に取り付け方法が複雑で簡単には取り外せないタイプのものもありますし、最近では対応できるドアの種類も多くなってきており、意匠性が高いタイプも出てきています。

 

4.スマートロックによるメリット・デメリット
 
ここではスマートロックの内、後付け型のもののメリット・デメリットについて紹介します。
 

(1)メリット
 
 ①鍵の開け閉め
外出・帰宅時の施錠・開錠で、物理的な鍵を使う必要がなくなりますので、単純に荷物が減りますから紛失のリスクも減少するといえるでしょう。また、多くのスマートロックは、一定時間を過ぎると自動で施錠するオートロック機能やタイマーロック機能が備わっています。スマートフォンをもって外出すれば勝手にドアをロックしてくれるので、鍵のかけ忘れの心配がありません。
 
 ②鍵の受け渡し
友人を部屋に招く際、自分より先に部屋に入って待っていてもらいたい場合、これまでは事前に物理的な鍵を渡しておかなければなりませんでした。しかし、スマートロックがあれば友人のスマートフォンに「合い鍵を送る」ことができます。
具体的には彼らのスマートフォンに専用アプリをダウンロードしてもらい、あとはマスターキー機能をもつ入居者が、彼らにスマートロックを開ける権限を設定します。
これによって、都度事前に鍵の受け渡しをする必要がなくなり便利です。
 
 ③鍵・シリンダー交換
入居者にとって便利であることはもちろんですが、不動産管理会社にとってもメリットがあります。賃貸物件はその特性上、入居者の入れ替わりが何度も発生します。数年単位あるいは月単位で入れ替わりが発生することもありますが、前の入居者が使っていた鍵がそのまま使える状態で次の入居者に渡せるはずはありません。万が一にも解約して引っ越したはずの前入居者が鍵を開けて入ってくるような事態が発生してはなりませんので、鍵・シリンダーは入居者の入れ替わりの都度、変更する手間と時間がかかります。
一方でスマートロックの賃貸物件であり、入居者にスマートロックのみを利用してもらうという使い方ができた場合、鍵管理に関する業務を効率化することができます。
 
 ④他システムとの連携
内覧予約システムと連携するスマートロックも登場しています。一般的に賃貸不動産の仲介事業者が内覧案内をするときは、担当者が貸主等から物理的な鍵を受け取る必要があります。しかし、スマートロック機能を使えば内覧の時間中のみ使用可能な鍵を発行することができますので、仲介事業者の鍵をピックアップする手間や時間、ひいては家を借りたい人・探している人の時間を節約できるようになります。最近では、外国人観光客向けの民泊施設にも続々と導入が進んでいるようです。
 
 ⑤防犯性
既存のドアの上に設置を行うため、サムターン回しやピッキングのリスクが変わるわけではありません。しかし、鍵の開閉履歴が後からわかることで不法侵入に気づくこともできますし、場合によっては鍵が開いたことをリアルタイムで手元のスマホ等に送る機能も用意されていますので、防犯面でも役に立ちます。一人暮らしの女性などには心強い機能ではないでしょうか。
 

(2)デメリット
 
 ①電池切れのリスクがある
電池を動力とするスマートロックの場合、電池が切れると動かなくなります。万一の電池切れの際には、市販の電池を用いて緊急作動させることができます。また、これもシステムによりますが、スマートロックを取り付けていても、同時に物理的な鍵を使用して開錠できるものもあります。
 
 ②取り付けられないドアロックの形状もある
機種により対応できるドアロックの形状があります。2015年発売当初と比べれば、対応可能な形状は増えていますが、スマートロックの形状や相性でどうしても取り付けができないタイプのドアロックがあります。導入の際にはスマートロックのメーカー各社ホームページ等で対応するドアロックを確認する必要があります。
 
以上、スマートロックの特性やメリット・デメリットを整理しました。
まだまだ一般的に広く普及しているとはいえない状況ですが、マンションや一戸建て、事業者のみならず一般家庭にまで少しずつ利用が広がってきているのは事実でしょう。メリットだけではなくデメリットもあるシステムですが、便利に活用できる場面もいろいろとあり、これからもその幅は広がっていくことでしょう。
 
以上

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