退去時に立会い確認をすることが原状回復トラブルを回避する重要ポイント
賃借人が退去する際には賃借人と賃貸人の認識の相違などによって、様々なトラブルが発生しがちです。そのようなトラブルを未然に防ぐためのキーポイントになるのが、今回ご紹介する退去時の立会いによる現状確認となります。退去時立会い以外にもトラブル防止のための重要ポイントがありますので、合わせてお伝えしていきます。
賃借人の退去時には原状回復工事の費用負担や敷金をめぐって頻繁にトラブルが発生します。このようなトラブルの主な原因となっているのが、入居時と退去時における部屋の程度差についての賃貸人と賃借人の認識の相違です。
例えば、「床のキズは入居時からのものなのか、あるいは入居中に賃借人によってつけられたのか」といった認識や「壁の汚れは通常損耗の範囲なのか、あるいは賃借人の故意・過失によるものなのか」といった認識における相違などが挙げられます。
このような賃借人と賃貸人双方の認識の相違を避け、トラブルを未然に防ぐためには、賃借人が退去する際の不動産管理会社による立会いが重要になってきます。賃借人に立ち会ってもらう中で部屋の中のキズや汚れの有無を一緒に確認することで認識の相違が生じないようにできるからです。
不動産管理会社はどの程度の原状回復が必要なのかを立会い時の状況などから判断していきます。その中で通常の使用によって生じたいわゆる通常損耗や経年変化によるキズや汚れと、賃借人の故意・過失や善管注意義務違反や通常の使用方法を逸脱する方法での損耗とを明確に区別します。
そして最終的に賃借人の費用負担となるものを敷金から引いたり、それでも足りなければ請求するという流れになるのです。
従って、このような一連の確認作業を完結し、退去時のトラブルを少しでも回避するために双方で立会いをすることが非常に重要になってきます。
次に実際によくあるトラブルにはどんなものがあるのかをご紹介していきます。
最初の事例は、賃借人の費用負担となる原状回復工事の範囲について、賃借人と賃貸人双方の認識の相違があるために起こるトラブルです。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、原状回復とは「借りた当時の状態に戻すことではない」と定義されています。
つまり、日常生活の中で通常の使用方法を通じて生じたキズや汚れ、劣化などは通常損耗として賃貸人の費用負担で原状回復がおこなわれるべきとの考え方が示されています。さらに経年変化や日常生活で避けられない劣化については、毎月の家賃で賄うべきものとなります。そのような通常損耗や劣化についてまで賃借人の負担としたのではトラブルの元になってしまいがちです。
このようなトラブルを未然に防ぐには契約時に原状回復の範囲を明確に取り決めておき、その範囲について賃借人が納得できるような説明をしておくことが重要です。特に賃借人には物件の使用にあたっては善管注意義務というものがあり、故意や過失、通常の使用方法を逸脱するような使用がなくても、そのような注意義務に反すれば原状回復の責任が問われるという点を十分に説明しておくことが大切です。
上記の例と同様に頻発するものとして、クロス壁や床、キッチンなど水回りの損傷や汚れについて賃借人の入居前から既にあったものなのか、あるいは賃借人の故意や過失などによるものなのかといった認識の相違をめぐるトラブルがあります。このようなトラブルを防ぐには後述するような「立会いによる現状確認」や「入居前や退去時の室内状況の写真撮影」などが有効です。
立会いによる現状確認の重要性については既にお伝えした通りですが、立会いの時にはトラブル回避のための重要なポイントがあります。それは退去時の室内状況を記録するために証拠として写真を撮影しておくことです。これは退去後にキズや汚れの有無など部屋の状況について賃借人との認識のズレを回避するためにも大切になってきます。
また、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損に基づく原状回復費用を請求する場合、その証拠は賃貸人が提示しなければなりません。従って、入居前の室内状況の写真も撮影しておけば、入居前と退去時の比較が容易になりますし、賃借人が費用負担すべき原状回復工事を請求する根拠とできることからも安心です。
たとえ退去するまでは良好な関係を保っていても、退去時や立会いの際に賃借人と賃貸人の費用負担をめぐり、感情的になってトラブルが発生してしまうのは避けたいところです。従って、賃貸物件に精通した不動産管理会社や立会代行を業務としている工事会社に相談することが有効となってきます。
今回の記事では、賃借人退去時の立会いによる現状確認の重要ポイントを中心にお伝えしてきました。ご紹介した内容を参考にしてトラブル回避に役立ててみてください。