原状回復工事のスケジュール|賃貸収益物件は迅速対応がポイント

原状回復工事は、どの程度の工事をどこに依頼するかによって要する期間は違ってきます。
クリーニングや部分補修だけなら早ければ1日~ほんの数日で済みますが、クロスやフローリングの張替え、設備や水回りの修繕・取替えの場合は数週間を要するケースもあります。
また、賃貸管理会社が子会社として工事業者を持っているか、外部の工事業者に依頼するか、その業者とどういった関係性かによってもやり取りに要する時間が変わってきます。

今回は、原状回復工事における基本的な流れをご紹介します。

■原状回復工事に要する手順と期間
1.入居者からの退去連絡
大半のケースにおいては、入居者から賃貸管理会社への退去連絡が起点になります。管理会社に業務を委託していなければオーナー自身で退去立会等の手配をすることになりますし、管理会社に任せていれば管理会社が各種日程の調整や業者手配をしてくれますのである程度お任せできるでしょう。

2.退去立会い
入居者が退去する際、入居者と管理会社、工事業者が室内状況を立会確認します。立会いは1時間もかからない場合もありますし、長くても数時間程度で済みます。管理会社がいる場合でも、できればオーナーも一緒に立会うことで状況が確認でき、その後どのような工事が必要になるかを相談しやすくなります。

・壁、天井、床のチェック
・キッチン、トイレ、浴室、洗面など水回りのチェック
・建具、周辺設備のチェック
など、原状回復工事の実績ある業者や管理会社は、これらをチェックリストに沿って確認していくことでチェック漏れ防止体制をとっています。そのうえで、後後のトラブルにならないよう、それぞれの箇所を写真撮影してしっかりと証拠として残すことも重要になります。

3.見積り
現況確認をもとに、補修や取替え工事の見積りをします。
工事業者は2~3日で見積りし、管理会社との間で調整を行なったうえで、見積りがオーナーに提出されます。当然ですがオーナーが工事業者に直接依頼している場合は、管理会社の出番はありません。

管理会社に任せる場合、原状回復工事についてどのような工事にしたいか明確にしておくことが大切です。例えば、これを機に大幅なリフォームをしたい場合や、なるべく手を加えず低コストに抑えたいなどです。退去立会い前に管理会社に明確に伝え、それに基づいた工事業者の選定、室内状況チェックと見積りを出してもらうようにしましょう。

4.施工
クリーニングや部分補修、簡単な設備の交換工事だけなら数日で工事は終了します。クロスや床の全面張替えや修繕箇所が多い場合は、1~3週間程度が目安になります。ただし、工事内容や時期によってはそれ以上かかることもあるため注意しましょう。
繁忙期は工事業者や職人のスケジュール調整が困難で、工期が長引くことも予想されます。再商品化を急ぐあまり工事に不備が生じてはいけないので、日程的に無理な依頼はしないようにしましょう。

5.工事完了、立会い
工事業者から工事完了の連絡があれば、施主(工事を依頼した管理会社やオーナーなど)が立会いし工事の完了確認をします。この際、工事に不備があれば手直しを指示、問題なければ工事は完了となります。

オーナーが直接工事業者に依頼する場合、すべてにオーナーが関わり対応することになります。工事業者とオーナーが直接やりとりするので、原状回復に慣れた工事業者であればスピーディに進めることができるでしょう。
一方、管理会社に任せる場合、管理会社からの報告のみで済ませることもできます。管理会社と工事業者でやりとりし、それを管理会社がオーナーに報告するので若干のタイムロスが発生することもあります。
ただし、不慣れなオーナーが工事業者とやりとりするより、原状回復に慣れた管理会社と工事業者が対応する方がスムーズに進むこともありますし、管理会社なら工事の不備を見逃さずに指摘できる場合もあります。

■賃貸物件の原状回復において重要なポイント
賃貸物件では、物件を迅速に再商品化していち早く収益を生み出せるようにすることが重要です。
そのためには、前入居者の退去から原状回復工事完了までの期間をできる限り短くできるかが当然ながらポイントになります。しかしそれだけでなく、賃貸管理会社との連携をうまくとることで、スピーディな収益化を計ることにもつながります。

1.退去連絡を受けてからの初動対応の迅速さ
入居者が退去連絡をしてくるのは、一般的には1カ月~数か月前くらいです(数週間前の場合もありますし、退去の直前あるいは退去当日に連絡がくる場合もあります)。退去までに立会い日程を決定して工事業者を手配しますが、あくまでも原状回復に留める工事にするのか、これを機に大規模なリフォームをするかなど、どの程度の工事をするかをオーナーと管理会社とで相談しておく必要があります。

2.入居者募集のタイミング
賃貸物件の場合、工事が完了して人が住める状態になれば、一日でも早く新しい入居者に賃貸して収益をあげたいところです。そのためには、工事完了の時期に合わせて事前に入居者の募集をかけておく必要があります。
賃貸物件では、申込みから審査、契約までに1週間前後はかかります。工事完了を待ってから募集しているのでは遅過ぎるのです。一方で、工事が完了していない場合はお部屋を内覧することができませんので、早過ぎる募集も申込みのタイミングを上手くつかめない場合があります。その場合の対策等はICTを利用している管理会社だとうまく対応できるかもしれません。
いずれにしても賃貸管理会社の募集ノウハウや工事業者と賃貸管理会社との連携を通して、再商品化された物件を最速で賃貸することが重要です。

3.優先すべきは空室期間を最短にすること
工事に関して、オーナーとしてはできるだけ負担するコストを削減したいのは当然です。見積りを吟味し、無駄な工事は省いて次の募集戦略に応じた工事をする必要があります。
ただし、コストに拘るあまり、必要以上に値引き交渉に時間を費やすのは良策とはいえません。工事やコストの規模にもよりますが、小さな値引きのために日数がかかってしまうより、一日でも早く工事を完了させて空室期間を縮める方が、結局プラスになることもあります。
 
以上

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