大規模修繕にトラブルはつきもの?

大規模修繕はマンションの資産価値や綺麗な外観を維持する上でとても重要です。しかし残念ながら、大規模修繕を実施する際、様々なトラブルが発生する可能性があるのも事実です。今回は大規模修繕にまつわるトラブルとそのようなトラブルを回避するために大切なポイントについてご紹介していきます。

大規模修繕に関するトラブル
まずは大規模修繕で発生することが多いトラブルについて、具体的な事例をお伝えしていきましょう。

・入居者からのクレーム
大規模修繕工事が始まると、工事中の騒音や臭い、日当りの問題、導線の不便さなどから居住者からクレームが入るケースが非常に多く見られます。外壁修繕の際にはマンション全体に足場が組まれ、防護ネットがかけられるために日当りや視界が悪くなるばかりか、洗濯物をベランダに干せなくなるといった不便な状況が続くことになります。
なお、エレベーターの改修工事は入居者に与える影響も大きいため大規模修繕とは別タイミングで実施することが一般的なのですが、いずれは実施しなければならない重要項目の一つです。実施する際にはエレベーターが一定期間使用できなくなりますので、複数台あればスケジュールをずらして対応することもできますが、1台しかない場合は生活に大きく支障をきたすことにもなりかねず、慎重な判断が必要になります。

・修繕費用の不足
1棟マンション所有の場合、計画的に資金を用意しておかなければ大規模修繕工事が必要になった際に短期的には都合がつかず、対応に苦慮することにもなりかねません。大規模修繕に向けた準備はともすれば見逃されてしまいがちですが、長期的な視点での資金の確保がとても大切になります。

また、分譲マンションにおける大規模修繕のトラブルとして、修繕費用の不足に起因する問題がが数多く発生しています。既にこの問題はマスコミでも多く取り上げられる話題となりましたので、一般的にもだいぶ認知が拡大している問題です。
新築の段階ではどのように建物が劣化していくのかを完全に見極めることが困難なため、当初想定を超える費用が発生する場合もあり、特に築年数が古くなればなるほど修繕には多くの費用がかかる傾向がありますので、修繕積立金は益々不足していく一方になりがちです。

そして区分所有者が多ければ多い程に修繕積立金の増額同意を得ることも難しくなります。区分所有者それぞれのライフスタイルや家庭事情に応じて様々な思惑があるため、実施可否の意思統一や合意を図ることも簡単ではなく、近年はそのようなトラブル事例が数多く発生しています。

・施工業者の倒産
件数やその割合からは稀なケースといえますが、大規模修繕工事の期間中に契約していた施工業者が倒産することもあります。このような場合、修繕工事が最後まで完了する可能性は低くなってしまうことは否めません。たいていの場合、資金繰りが逼迫しているため工事に必要な資材を購入する資金が不足していたり、作業員に対する給与の未払いが発生していたりします。また、その業者に対する様々な債権者がいるため、修繕工事を完了させるように協議することが困難となることが考えられます。

・悪質業者によるトラブル
近年では悪質業者によるトラブルも話題になっています。
大規模修繕工事はその金額や必要性あるいは工事内容についてはまだ一般的に広く・十分に認知されているとはいえず、そこにつけこむ悪質業者に騙されてしまう事例が後を絶ちません。行政も対応を進めている点はありますが、まだ不十分であると言わざるを得ないでしょう。

トラブル回避のためのポイント
上記のようなトラブルを回避するためにはどのような対策があるのでしょうか。大切なポイントについてお伝えしていきます。

・居住者からのクレームへの対策
居住者から寄せられる工事中の騒音や臭い、日当りの問題に対するクレームについては、事前の通知や直接訪問によるお知らせなどで対応する必要があります。その際、工事の必要性や目的などを記載した資料やチラシを用いて住民説明会を実施したり、直接ポストに投函して丁寧に伝えていくことがポイントになります。また、住民の出入りが多いマンションのエントランスや集会室、ラウンジなどにも大規模修繕の内容や工事日程を知らせる資料を掲示して周知徹底を図ることも重要です。

・修繕費用不足への対策
修繕費用不足が発生するケースが多くありますが、それには三つの対策が考えられます。
対策の一つ目は計画的に資金を確保しておくこと、二つ目は工事内容を見直すことで必要な費用そのものを見直すことです。最後は大規模修繕でまとめて多くの工事を実施するのではなく、小分けにして対応することです。

資金の確保については分譲マンションであれば住民に丁寧に説明して追加徴収したり、毎月の修繕積立金の額を上げていく方法もあります。しかし賃貸マンションの場合、オーナー側で修繕費を用意する必要があるため、想定以上の金額になった場合、費用の確保が容易ではなくなります。もし不足するようであれば金融機関からの融資を受ける方法もありますが、オーナーに金銭的な負担がかかることは避けられません。

そのため、場合によっては工事内容そのものを見直し、緊急性の高いものだけに絞るなど費用負担を減らす方法の検討が必要になってきます。ただし、この方法では次回以降の大規模修繕にかかる費用がより多く発生することも想定しておかなければなりませんので、あくまでも一時的な対応策にしかなりません。

したがって、計画的に進めることがなによりも重要になります。
場合によっては三つ目の対策である工事内容を分散し、計画的に対応していくことも大事なポイントとなってきます。
そういった計画においては、管理会社のノウハウを上手に活用することで、トータルのコストを抑えることにもつながります。

・施工業者の倒産への対策
施工業者の倒産を回避する最も効果的な対策は、業者選定を適切におこなうことです。業者選定の際には施工実績を確認するとともにその業者の財務基盤がしっかりしているかを確認し、財務状況が思わしくない業者への依頼は避けるようにします。

財務基盤については、できれば依頼を検討している業者から3期分の決算書を提出してもらい、その内容をチェックするようにします。その際、財務分析や会計の知識がある人や、税理士などの専門家に依頼すると良いでしょう。また、工事完成保証などの保険に加入している業者を選定することも重要なポイントになります。

・悪質業者への対策
1棟マンションを個人で保有するオーナーや、管理組合が主導となって大規模修繕を実施する場合は、過去の実施経験がなかったり、それほど多くないことが一般的といえます。そのような場合、インターネットの情報等を参考にした業者選定では悪質業者を適切に選別することは難しいかもしれません。
こういったケースを想定しても、やはり管理会社やプロに頼ることが一つの有効な対応策になりえます。


まとめ
大規模修繕にまつわるトラブルの事例とその対策についてお伝えしました。
スムーズな大規模修繕を進めるには、予め想定されるトラブルや工事内容に備えて十分な対策をとっておくことが重要だということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
 

以上

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